#7 なかなか授からない日々と、病院へ行く決意 ―“自分も調べる”と決めた日、妊活はふたりのものになった―
\ 連載中「僕たちの妊活はじめました。」シリーズ /
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妊活を始めてから、数ヶ月が経ちました。
タイミングも合わせてきたし、サプリも飲み続けています。
だけど、なかなか授かりませんでした。
少しずつ不安が募って、
「うちは、もしかして何か問題があるのかな」
そんな言葉を、妻がポツリとこぼしました。
その数日後、妻は自分から「病院、行ってみようかな」と言いました。
私は着いていくか尋ねましたが、クリニックということもあり、「恥ずかしいから大丈夫」と断られました。
僕はその日、自分でも何かできることを探した。
そして、自分の精子の状態を知るために、検査を受ける決意をした。
妊活を続けて見えてきた“焦り”と“不安”
月に一度の希望と落胆を繰り返す日々
「妊娠しやすい日を狙ってしているのに、なぜ?」
すぐに授かるものでもないことは分かっています。
ですが、陰性の判定結果を見る度に落胆していました。
毎日一回判定チャンスがあれば、一度や二度の陰性判定が出たところでそこまで落胆しなかったでしょう。
しかし判定をするのは月一回。その間は希望を持って・・・!
またか。
妻は「期待しないようにしてる」と言っていましたが、口先だけで、本当は期待しちゃうよね。
少しずつ、希望を持つことも辛くなってくきました。
だって、毎回裏切られるし。はぁ。
「原因があるのかも」という不安の重み
だんだん、私たちの体のどこかが悪いのかを疑うようになりました。
すぐできる人もいるのに、なんで私たちはできないんだろう?
原因があるから・・・?
考えたくはないけど、見ないといけない現実。
もしできない体だったとして、現実を見ずにずっと続けていても苦しくなるだけ。
だけど・・・見たくない。知りたくない。
不安が、重くのしかかりました。
「ふたりで調べる」という選択ができたこと
そもそも、私側にも原因があるのかもしれない。
見たくない、見たくない見たくない。
けど、
妻に辛さを一人で背負わせるわけにはいかない。
私側は検査しないであいまいにしておいて、妻だけに治療を頑張ってもらって出来なかったらなぁなぁにすれば、絶対に私は楽。
「私ができない体」という最悪の現実を見なくて済むから。
その現実さえ見なければ、妻側が難しい体なんだとか、相性が悪いんだって、いつまでも言い訳できる。
子どもができなくたって、仕方なかったねって顔もできる。
けど、
そんなクソみたいな私のプライドや気持ちで、妻だけに辛さを背負わせるわけにはいかない。
私は2人の未来のために、プライドを捨てて恐怖心を乗り越えて「ふたりで検査をする」という選択を取りました。
妻の通院、そして僕の“検査”の決意
クリニックに向かう妻の背中を見送った朝
妻がクリニックに向かうのを見送った朝。
妻だけが頑張ってる、妻だけが辛い思いをしている。
そう感じました。
私はまだ何もしてない、検査をしようと思い立っただけ。
悪い未来ばかり想像してまだ、何もしていない。
それなのに、妻を見送るだけでいい夫気取り。
妻だって、辛いはずなのに私は――――。
「俺も調べる」と言えた日、妊活が“ふたりごと”になった
けど恐怖心を乗り越えて「2人のために私も調べる」と言えました。
そこから妊活が”ふたりごと”になりました。
言ったからには、もう、検査は絶対にしなければいけません。
昔は、余裕だと思ってた。
射精するだけだし別に痛い治療なんかするワケじゃないし。
けれど実際に精液検査をするとなると、すごく怖い。
泌尿器科で精液検査を受けるまでの流れ
泌尿器科なんて、これまで一度も行ったことがありませんでした。
検索して近隣の医院を調べ、口コミをいくつか読んで「検査に慣れていそうなところ」を選びました。
私の中で、検査医院は近隣にあることが前提でした。
近隣ならすぐに行けるから、というメリット。
通うのに楽、とかそういうことではなく、何か聞きたいことがあったときにすぐに意見を聞けるからです。
遠いと、仕事との兼ね合いで受診が遅れたり、聞きたいことが聞けないまま時間が過ぎてしまいます。
それは、妻が不安を抱える時間が長くなることでもあります。
妻の心を少しでも軽くできるように、近くの医院を選びました。
あなたは、病院を選ぶとき、どんなことを大切にしますか?
通いやすさ、口コミ、専門性……。
でも何より、安心してすぐに相談できる場所かどうかって、大事なのかもしれません。
不安な時間は短い方がいいですしね。
まず医師の診察を受ける(相談形式)
指定された日に合わせ、4日間の禁欲
精液は専用容器に採取し、後日提出
提出後は、検査機関へ送られる
結果は約1週間後に再来院して聞く
正直、検査というより”審判”を受けるような気持でした。
「もしかして・・・全部ダメって言われたら?」
知識もなかったため二択のように考えていた私にとって、その一週間は長く、重いものでした。
精液検査のリアルな体験
4日間の禁欲と“死刑宣告かもしれない”という恐怖
電話予約をすると検査をしていただけるとのことでしたので、予約をしその日時に医院へ。
当日はまず受付で精子検査をしたい旨を伝えました。
受付が女性だったため、恥ずかしかったです。
しかも、私の心はそれどころではなかったのにも関わらず、「検査ですね、まずは医師の問診があります」と少し事務的で。
ナイーブな話なので、もう少し柔らかい感じにしてほしかったです。
こんなに余裕がないのは、私が勝手に”後ろめたさ”を背負っていたかもしれないですね。
その後、診察まで待合室で少し長い時間を待ちました。
私は以前、保健所でHIVの即日検査をしたことがあります。
その時のように即日結果が出るものだと思っていました。
「もう数時間後には結果が・・・私の未来が分かっているんだ」
人生の岐路に立っているような気がしました。
診察室に呼ばれると、そこには医師がいました。
簡単な問診をうけ、4日間の禁欲をお願いされました。
検査当日は、専用の容器に採取した精液を指定の時間内に提出するだけでした。
てっきり、個室があってその部屋で採取してくるものだとばかり思っていたので、内心ホッとしました。
「即日検査で結果が出ないのか。なんとか生きながらえた・・・・・・」
ここで一つ、あなたが精液検査を考えているのであれば、ゼッタイに知っておいてほしいことをお伝えします。
指定の提出時間を間違えると受け取っていただけないので、注意が必要です。
精液の状態が変わってしまうため、提出時間が早すぎても遅すぎてもダメです。
間違ってしまったら、「じゃあ明日また」というワケにはいきません。再度4日間の禁欲です。
私はこれを知らずに早い時間に提出してしまいました。
じゃあ次の4日後に、とうまくいけばいいのですが、仕事や開院時間がうまく合わないと伸び伸びになってしまいます。
そんなこんなで伸び伸びになっていたら、排卵日。検査はさらに延長。なんてことになりかねません。
そうなってしまうと、私のミスのせいで妻が不安を感じる時間も長くなってしまいます。
ですので妻のことを思うのであれば、提出時間は厳守事項です。
結果は提出約1週間後にもう一度来院して聞くという流れでした。
これで本当に「わかる」のか…と、正直不安なまま帰路についたのを覚えています。
「数は多いけど運動率は低い」という結果に感じた複雑な気持ち
診察で呼ばれるまでの時間、手に汗を握りました。
「ダメだったらなんて伝えよう」とか「調べなきゃよかったのかも」とか。
ああああああなんで検査なんてしたんだ知りたくない知りたくない知り
と思っているうちに、診察室に呼ばれました。
「数は多いけど運動率は低い」という結果でした。
精子がいないだとかまったく動いてないだとか、もう完全にダメで可能性なし、という状態ではなかった。
けど・・・
運動率が平均よりかなり低い・・・。
数は多いのでそれはよかったみたいですが、運動率が低いので。
数はすごく多かったです。平均の数倍以上よりもかなり多い数いました。
ですが運動率は正常値が42%のところ、私は20%を切る程度でした。
うーん、可能性は全然あるようでしたが、素直に喜べませんでした。
というか、専門家でもないのでどう受け取っていいのか分からない・・・。
「まだ可能性はある」という言葉に、少し救われた
セックスレスだった期間、妊活をし始めてからの期間を医師に伝えると、まだ可能性はあると言われ、少し救われました。
あくまで少しですが。
けどその可能性に賭けるしかない。
大手を振って喜ぶことはできないものの、妻に落ち着いて報告はできました。
妻も結果を聞いて、安心した様子でした。
「私の見栄や言い訳のために検査をしない」という選択をしなくて本当によかったです。
不安は残ったものの、妻の安心した声を聞けて本当によかった。
検査結果がふたりにもたらしたもの
「原因がないこと」より「状態を知ること」が前進だった
結果が出るまで、「自分の精子は大丈夫なのだろうか」「実は自分が不妊の原因なんじゃないだろうか」などの考えが、ずっと頭にありました。
「もし自分が原因だったら、妻ががんばって病院いったところで意味がない。」とか「私原因でできないならできないで、妻に人生プランを提案しないといけないのに…。場合によっては離婚も受け入れないといけないのに。」など、妻に対する申し訳なさを抱えて、心がずっともやもやしていました。
しかしたとえ完璧な結果でなかったとしても、”知ること”が私たちにとって前進でした。
不安を妄想で膨らませるより、現実を見た方が心が落ち着きました。
もちろん、”可能性はある”と言われたから、結果論で「現実を見た方が心が落ち着きました」とかっこよく言っている部分もかなりあると思います。
見なきゃよかった最悪だって思ってたルートもあったかもしれないです。
なのになにが「現実を見た方が心が落ち着きました」だよって感じですね、よく考えると。
それに”可能性はある”という結果を得られたのは、私の努力でもなんでもないです。
運です。
それをあたかも自分で引き寄せたかのように、かっこつけて。すみません。
しかし、
運による結果を見るための勇気をくれたのは、妻です。
勇気をもって決断し覚悟し、結果を見たのは私です。
妻のおかげで、妊活がふたりごとになって、結果を見て、前進した。
前進できた。
妻が結果を持っていった朝、私は黙って見送った
私の検査結果は、妻がクリニックに持っていきました。
「任せてね」と笑う妻を見て、私はただ「ありがとう」とだけ言いました。
一緒に行けないことを寂しいと思う反面、妻の気持ちを尊重したかったです。
私にできることは信じて見送ることだけでした。
セックスレスを乗り越えてからの私たちだから。
勇気をくれた妻だから――――
信じられる。信じてる。
「不妊かもしれない」という言葉を、冷静に受け止められた理由
「妊活を初めて1年以上たっても授からないなら”不妊”です」
医師にそう言われたとき、一瞬、目の前が暗くなったような気がしました。
しかし私たちはレスを乗り越え、妻はすでに通院を始めていたし、私も検査を受けました。
2人それぞれができることをして、妊活が”ふたりごと”になっていたから、冷静でいられたのだと思います。
“可能性はある”というだけで、陽性判定が出たワケでもなんでもない。
だけど、
私たちはもう、強くなれた。
冷静に現実を受け止めて、まだまだ前に進みたいと思います。
まとめ「向き合うのを“ひとり”にしない」
妊活は、何もかもが見えない中で進むレースのようでした。
「何が正解か」もわからないです。
「どこに問題があるのか」も、はっきりしません。
でも、勇気を出して病院へ行って、
妻も、そして自分も、調べてみたことで少しずつ霧が晴れていきました。
精子の状態を知るのは怖かったです。
けれど、調べたからこそ、“じゃあどうしようか”と話せるようになりました。
妊活は、見えないことと向き合う日々。
でも、向き合うのを“ひとり”にしないことが、一番大事だったと、今なら思える。
妻とともに。
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