陰嚢(いんのう)の中の静脈に“こぶ”のような拡張が起き、精巣まわりの温度が上がりやすくなる——これが精索静脈瘤です。痛みや重だるさだけでなく、精液所見に影響することがあり、妊活中の男性では早めの把握が大切。この記事は、症状の特徴/検査・診断/治療選択肢/術後の経過を、夫目線の運用コツまで含めて一気に整理します。
夫の実感:痛みが「日によって違う」ときほど記録。いつ・何をした日がつらいかが受診で効きます。
そもそも精索静脈瘤とは
起きていること(メカニズム)
精巣から心臓へ血液が戻る静脈で逆流やうっ滞が起こり、精巣静脈が拡張した状態です。血流の滞りは局所温度の上昇や酸化ストレスを招き、結果として精子の数・運動・形態に影響することがあります。症状が軽く自覚しにくい一方、検査では見つかる——そんな“静かな要因”になりがちです。
左右差と特徴
左側に多いのが典型。夕方、長時間の立ち仕事や入浴後に重だるさを自覚しやすく、指で触れると**「ミミズがからんだ」**ようなゴロゴロした感触(虫様静脈)を感じることがあります。症状は日によって波があり、「今日は平気」「今日は違和感が強い」と変動しがちです。
気づき方(セルフチェックの視点)
こんなサインがあれば要注意
陰嚢の重だるさや鈍痛が立位・運動後・入浴後に増す、片側(多くは左)の膨らみや下がりが目立つ、触ってわかるゴロゴロ感がある、長時間座位や膝上PC・熱い風呂・サウナのあとに違和感が強まる——こうした所見が続くなら、受診のサインです。
*夫の気づき:夜勤明けや長風呂の翌日、**痛みスコア(0–10)*をメモすると、変化の型が見えてきやすいです。
セルフチェックのコツ
立位・室温ふつうの環境で、軽くいきむ(腹圧)と拡張がわかることがあります。ただし強く押さえない/痛みが強いときは中止。あくまで目安に留め、判断は医師に委ねるのが安全です。
受診の目安と窓口
痛み・違和感が数週間続く、妊活中で精液所見が気になる/既に異常を指摘された、左右差や腫れが目立つ——いずれかに当てはまるなら泌尿器科や男性不妊外来へ。妻の通院が先でも、夫の検査を並行すると全体像が早く整い、次の一手が決めやすくなります。
検査・診断の流れ
視触診(立位+腹圧)
立位で陰嚢を観察・触診し、バルサルバ手技(いきみ)で拡張や逆流の有無を確認します。臨床的にはグレードⅠ〜Ⅲで重症度をざっくり評価します。診察室での所見が、その後の検査や治療方針の起点になります。
超音波(ドプラ)
静脈径や逆流を可視化でき、サブクリニカル(触れないが画像でわかる)も拾えます。必要に応じて精液検査やホルモン検査を追加し、痛み+客観データで総合判断します。
夫のコツ:検査日・痛みスコア・立位時間・入浴/サウナの有無をA4一枚にまとめて持参。推測が調整に変わります。
治療選択肢(経過観察/手術/血管内治療)
経過観察(保存的)
痛みが軽く、妊活への影響が小さい場合は経過観察になることも。陰嚢サポーターで揺れを減らし、長時間の立位や高温環境を避ける、適度な運動や体重管理など、生活調整を提案されることがあります。鎮痛薬の使用は医師の指示に従いましょう。
手術(静脈瘤結紮術)
代表的なのは顕微鏡下低位結紮(サブインギナル)。拡張静脈を結紮・遮断して逆流を断ちます。再発や合併症を抑えやすい術式を採用する施設もありますが、再発/陰嚢水腫/感染/しびれなどのリスクはゼロではありません。頻度や対策は術式・施設・術者の経験で異なるため、事前説明で納得してから臨むのが安心です。
血管内治療(塞栓術)
カテーテルで原因静脈を内側から閉塞する方法。切開創が小さく回復が早いとされる一方、適応や実施施設が限られるケースもあります。可逆性・再発率・通いやすさを含めて比較し、生活に合う選択を。
どちらを選ぶ?(意思決定の軸)
主訴が痛み中心か妊活(精液所見の改善)中心か、術者の経験値、通える距離、休める日程、費用と回復スピードの優先度を並べると判断がぶれません。迷うときはセカンドオピニオンで複数施設の説明を聞き、納得の基準を自分たちで作りましょう。
効果と評価のタイミング
精子がつくられて射出されるまでには約70〜80日かかります。術後の精液所見は3か月以降から変化が見えやすく、6か月前後でより評価しやすくなります。**「手術=即改善」**ではないため、期待値をコントロールしながら、男女の要因を併せて次の一手(生活改善・再検査・治療計画)を話し合うのが現実的です。
術後の経過とセルフケア
当日〜1週間
医師の指示に沿って安静に。患部の冷却、陰嚢サポーターで振動・牽引を減らします。入浴は許可が出てから(多くは数日後にシャワー可)。痛み止め・抗生剤は処方どおりに。違和感が強い、腫れが増す、熱が出る——そんなときは早めに連絡を。
1〜2週間
重い運動・長風呂・サウナは控え、仕事内容に応じて段階的に復職。デスクワークでも長時間座りっぱなしは避け、こまめに立ち上がると楽です。
3か月
精液検査で再評価。結果は妻の検査(エコー、ホルモン、基礎体温・LH)と同じ台紙に並べて、次の一手を整理します。
*夫のコツ:職場には「短期の通院で負荷がある」と先に共有。家事の一時シフトも決めておくと、回復に集中できます。*
よくある質問(要点を文章で)
Q. 左だけ多いのはなぜ?
解剖学的な静脈の走行や圧のかかり方が関係するとされ、左側に多く見られます。ただし右や両側のこともあります。
Q. サウナや長風呂はダメ?
高温は症状や所見を悪化させる可能性があります。治療前は控えめに、術後は許可が出るまで回避が無難です。
Q. 自然に治る?
自然軽快は乏しいとされます。痛みや妊活への影響があれば、医師と治療方針を検討しましょう。
Q. 手術と塞栓、どちらが良い?
症状・所見・施設の強み・通院事情で最適解は変わります。術式の違い、成績、合併症、再発時対応、復職目安、費用まで説明を受け、納得のうえで決定を。
夫婦の運用テンプレ(チェックを文章化)
まずは痛みスコア(0–10)、立位時間、熱の曝露(風呂・サウナ・膝上PC)を1行日誌で簡単に残します。検査結果(精液・超音波)はA4一枚に集約し、受診候補の3院を距離・術式・説明のわかりやすさで比較。質問リスト(術式の違い、合併症、再発時の対応、復職目安、費用)を持参すると、診察は推測から調整に変わります。術後3か月レビューをカレンダーに入れ、結果を夫婦で共有して次の一手(生活・治療)を決めましょう。
夫の実感:評価より記録。叱られない台紙があると、二人で淡々と前に進めます。
まとめ|“痛みと数字”を同じ台紙で見る
精索静脈瘤は、痛みという自覚と精液という客観データが交差するテーマです。気づく(夕方の重だるさ、触れるゴロゴロ感、左右差)、診る(視触診+超音波、必要に応じて精液・ホルモン)、選ぶ(経過観察/手術/塞栓を生活と時間軸に合わせて)、整える(術後は3か月サイクルで再評価)。数字は合否ではなく地図。**「痛みと数字を同じ台紙」**に並べ、推測を調整に変えていきましょう。
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免責:本記事は一般的情報の整理です。診断・治療の最終判断は必ず主治医の説明を優先してください。
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